御殿場市 「東山旧岸邸」
公開日:2022年01月16日
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#2022年1月13日
全国的に、厳しい寒さ一日。晴れてはいたのですが、富士山は雪雲の中に隠れてしまい、御殿場の街には冷たい風が吹いていました。
さて、以前から拝見したいと思っておりました、御殿場市にある、第56、57代内閣総理大臣を務めた「岸信介氏」が晩年暮らしていらした「東山旧岸邸」へ行って参りました。
※御存知かとは思いますが・・・岸信介氏は、第96,98代内閣総理大臣を務めた安部晋三氏の「祖父」になります。
建物全体の模型 食堂からの庭の景色
岸氏の椅子に座ってみました静岡県景観賞優秀賞
御殿場市重要建造物ほんのりと明かりが灯る玄関
手前の広い所が車寄せ
政治家として、内閣総理大臣を務め、また現役の国会議員を続けながら、亡くなった1987(昭和62)まで暮らした御邸です。
東名高速道路が完成し、車で東京まで通勤が可能だと考えて、御殿場へ移住されたとの話です。
2005年に長女の安部洋子様より、御殿場市へ寄贈されました。
施主である「岸信介」氏の政治家としての生活に配慮しつつ、日本の伝統的な数寄屋建築の美しさと、当時では珍しい機能的な素材や細工を施しています。
建築家として2番目に文化勲章を受章した「吉田五十八(いそや)」が晩年、手掛けた代表作品です。
日本建築の落ち着いた雰囲気を残しながら、機能性を重視した緻密な設計とデザインに、アルミなどの工業生産材料を使用したり、和洋室に拘らず、各部屋に使用された荒組の障子戸、欄間などには、職人の技が光っています。
丁寧な案内係の方の説明を一つ一つ聴きながら、こだわりの工夫を見つけては、ただただ感心するばかりでした。
建物には、恐らく日々の生活の中で付いたであろう傷や、椅子には皺や痛みがそのまま残っており、当時の生活感が残っていました。
「どんな政治家の方々がこのご自宅を訪ね、どの部屋に通されて、どんな話をされたことでしょう・・・」
「そして、庭の景色を眺めながら、岸氏は日々、何を考えていたのでしょう・・・」
そんなことを思いながら、見学は約一時間程。不思議と短い時間に感じられました。
和室
お茶と庭の景色を楽しむ水屋
お茶席の際に道具を洗う場所
廊下の一角にあるのは、珍しい居間
一番奥に庭を向いた椅子
岸氏が庭を眺めて愛用した椅子
この日、普段、公開していない、「2階」のプライベートなお部屋も「期間限定特別公開」しており、更に貴重なお部屋の様子を拝見させて頂きました。
奥様が過ごした和室
唯一、この邸で富士山を望められるのが、右の窓
続きの隣室は、ご夫妻のベッドルーム衣装部屋
ここにご紹介出来ないお部屋(写真禁止)なども拝見出来て、行くことを思い立ったのがこの日で本当に良かった、とつくづく思いました。
居間からの庭の景色が、ソファーに座ると前にある鏡面テーブルに映ったり、また庭に面した大きな窓のサッシが全て左右の戸袋に収まると、まるで一枚の絵画のようになる。ここにも気の利いた演出と繊細な設計、職人の技術の高さに、心から感動しました。
まだ訪れていない方は、一度、ご覧下さい。ひっそりと林の奥に佇む、御殿場の名所です。
そうそう、お越しになる時には、是非、「旧岸邸」の入口にある、羊羹で有名な「とらや」のカフェ&売店「とらや工房」にも立ち寄りながら、「旧岸邸」見学はいかがですか?
何故、東京の「とらや」が、御殿場に?と思った方もいらっしゃいますか?実は、「とらや」は御殿場市内に羊羹の製造工場を持ち、この「旧岸邸」の指定管理者にもなっているからなのです。
とらや工房
旧岸邸の手前にあります